製本の世界に飛び込んで~手製ノートを贈る2019年12月15日 14:03

角背ドイツ装上製本
10年勤めてくれた後輩の寿退社記念にケース付きノートを作製した。
【作品説明】
ケース:夫婦箱(めおとばこ)
ノート:角背ドイツ装上製本 本文(ほんもん)は中性紙無地
布クロス:William MorrisのChrysanthemum
製作日数:3か月

会社員の私が趣味で製本の世界に飛び込んだのはちょうど2年前だった。ある資格を取るため週末神保町の学校に通っていた帰り道ふと立ち寄る古書店で戦前の書籍を買い始めたのがきっかけだった。
基本1冊1,000円以下、時には1冊100円、200円で90年以上前の古書が買えた。私が主に購入する分野は、教科書や地理、歴史、作法に関する古書。なぜならこれらの分野は、敗戦後のGHQ支配から現在に至るまで日本人の価値観が大きく変わった分野だからである。他国の何者にも支配されておらず思想的にもまだ「自由」だった戦前に、日本がどんな価値観で地理、歴史を捉えていたか、古書を通じてタイムスリップしたかったからだ。
毎回、手が届く範囲内の価格で購入するため、大抵ページが外れたり、表紙が無くなっていたりしている。中身が読めればいいと思って買うのだが、きれいな状態で読みたいと思う気持ちもあった。
修理に出せば数千円、数万円かかるかもしれない。
もともと数百円で購入した古書に、数千円出すのも割に合わない。
それならいっそ、自分で修理すればいい、手間だけで修理代はかからない、と思ったのが製本を始める動機だった。
修理するには、まず、書籍の構造を知らないと始まらない。本の修理は一旦バラバラにしたものをもう一度組み立てる作業だからだ。

ある製本工房の教室に通い始め2年になる。最初は何冊も何冊もノートを作り、本の構造を頭に叩き込んだ。ここ1年はそろそろ修復の域に入ってきて、数百円で買ってきたボロボロの本をきれいに装丁しなおし、生き返らせている。

これまで製本教室につぎ込んだ学費や材料費はもしかしたら、修理業者に出す費用より結局高額になったかもしれない。が、自分が思うような装丁や表紙をデザインできる醍醐味は、技術を学んでいるからこそ味わえる。
今回職場の後輩に贈るノートも、相手の嗜好を色々思いめぐらしながら、最後に喜んでくれる表情を見るのを楽しみに作製したものだ。
次は、以前お世話になった会社のOBが退職後自費出版した句集をケース付きハードカバーにしようと預かっている(もちろん無料で)。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://onokorojima.asablo.jp/blog/2019/12/15/9189515/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。