1869年(明治2年)出版の『JAPAN』を修復する2023年09月11日 01:06

154年前にロンドンで出版された洋書『JAPAN』を修復することにした。
表紙カバーも本文もしっかりしているのだが、表紙の天地が擦り切れて、本文の天地がむき出しになっているのと、
表紙と本文をつなぐ部分のノドの見返しが破れかけていた。
古本市にて、2000円で手に入れたものだったが、私がこれまで手にした洋本のなかで一番古いものだったので、いつか修理したいと思って大事にとってあった。
中身の本文や、表紙のカバーはしっかりしていて、そのまま引き継げるので、製本工房の親方指導のもと、2日間ほどで修理が完了した。
修理概要は以下のとおりである。

タイトル:JAPAN
サブタイトル: A SCKETCH OF THE HISTORY , GOVERNMENT AND OFFICERS OF THE EMPIRE
著者:WALTER DICKSON
出版社:WIILIAM BLACKWOOD AND SONS EDINBURH AND LONDON 1869年出版
装丁:丸背上製本 489ページ
修理内容:
背表紙天地部分の補強、

見返しのノドの部分(本文と表紙の接続部分の外れ)の補強、

本文の背固め(ページが外れないように背を補強)、
遊び紙として本文の前後に和紙を追加


これで次の100年に引き継がれることであろう。表紙の葵の御紋の金箔押しが150年過ぎても輝いている。

ピンクの電話~徳島県南部にて~2023年09月07日 00:03

 徳島県海陽町のホテルに立ち寄った時、フロントの脇にピンクの電話があるのを見つけて嬉しくなった。レトロな装飾品かと思ったら、よく見ると現役で使える公衆電話である。コインは10円のみ受け付ける。ホテルからタクシーを呼ぶときのために設置しているようだった。こういう「骨董品」は大事に使っていきたいものだ。

50年ぶりに訪れた西阿波のかずら橋2023年09月02日 17:37

この夏、50年ぶりに徳島県西部のかずら橋を訪れた。50年前の当時私はまだ小学生で、蔓のつり橋を渡ろうと思ったら、横板(そろばん板)の間隔が自分の足の大きさより広く、下を見ると急流が流れていて随分怖い思いだけは記憶に残っている。

今回は半世紀経って随分大人になっているし、自分の足も大きくなっているので、そんなに怖いことはないだろう、楽しむつもりで渡り始めた。 渡りはじめはよかったのだが、やはり段々怖くなってくる。脚がすくんできて、見るとまだ半分もたどり着いてない。このまま我慢して進むのが急に面倒くさく感じてきて、このまま来たところを戻ろうかとも考えた。が、戻るにも踵を返すこと、またそれも怖い。行くに行けず、戻るに戻れず、このどうにもならないという気持ちでさらに恐怖感が増した。

迷った挙句、進むことにした。我慢してなんとか渡り切った。大人になったから大丈夫だろうとなめてかかっていたが、かずら橋はやはり怖かった。

徳島県立文書館(もんじょかん)には昔のかずら橋の絵葉書が残っていた。池田荻田書店発行の絵葉書で、「徳島県美馬郡西祖谷山村カヅラ橋ノ全景」というのがある。発行年は不明、「戦前」としか記載がない。

この写真を見ると、かずら橋の角度が随分急である。これを渡るときの恐怖感は今のかずら橋の比ではないだろうと思う。

かずら橋のガイドさんにこのことを話すと、「昔のかずら橋は落ちて初めてその都度かけなおすことを繰り返していた。その写真のかずら橋の角度が急なのは、段々弛んできて、落ちる寸前だったかもしれない。今のかずら橋は、蔓だけではなく、実は中にワイヤーを通して補強している。サイボーグの橋や。」と教えてくれた。

サイボーグの橋とは面白い表現をするものだ。確かにこれだけ観光地の売り物になっているかずら橋、なにか事故があっては大変だし、懸け替えるのに休業するのももったいない。

  サイボーグになる前のかずら橋

毛沢東を「修復」する~黒につつまれた赤~2023年08月28日 16:30

 30年以上前に北京や日本の語学学校等で手に入れた毛沢東関連の古書を思い出し書棚から取り出すと、ビニールの表紙が変形・変色していた。いずれも文化大革命真っただ中の1960年代の出版で、当時の生活水準を偲ばせる簡素な装丁であった。それらをこの機に「贅沢」な総革に仕立て直すことにした。

まずは書籍本体、以下の4冊だ。
①『毛沢東選集』(中国語):1406ページ
②『毛沢東思想勝利万歳』(中国語 毛沢東語録も収録):579ページ
③『毛沢東語録』(日本語):431ページ
④『Quotation from Chairman MAO TSU-TUNG』(英語):312ページ

装丁前:ビニール製ブックカバー型並製
装丁後:総革丸背ソフトカバーつきつけ装
表紙:赤のシュリンク牛革
見返し:北京で購入した文化大革命トランプをコピー
タイトル:ホットペンと星型活字で箔押し
ケース:羊革五星紅旗空押し観音開き掛金錠四方帙 内側はアートレザー

 4冊とも原本は見返しもなく全体が粗末なものだった。以前北京軍事博物館で購入した文化大革命トランプから、文革当時のプロパガンダポスターをカラーコピーして、見返しにしつらえ、「豪華」な総革装丁に見合うカラフルさを演出した。

毛沢東語録とプロパガンダポスターは同時代のものであるが、本は本、ポスターはポスターで用途が別なので、当時でも両者は一緒に使われることはなかった。それを今回装丁しなおした本の中にプロパガンダポスターを見返し(表紙の内側)に仕立ててコラボさせた。

 最後にこの4冊を収めるブックケースがポイントだ。中国共産党にとっても「黒歴史」である文化大革命をとらえるには、ブックケースも黒以外考えられなかった。一頭分の黒い羊革を使い、観音開き風のケースにし、外装は鉄格子の向こうに、文化大革命自体の人民や毛沢東が見えるしつらえにした。この観音開きの扉を閉ざす錠は、以前ホームセンターで懐かしいと思って衝動買いし、いつか使いたいと思っていた掛金錠を使った。

最後にケースの上蓋、鉄格子の毛沢東の窓の下方に、五星紅旗を、金箔は使わず、黒い★を演出するため空押しをした。
「黒」につつまれた「赤」。「黒」を開けると、華やかかりし文化大革命の遺産「赤」がお出ましになる。世界広しといえどこんなに「豪華」な総革装丁の毛沢東語録は他にはないであろう。

阿波弁のおみくじ~徳島県護国神社~2023年08月20日 23:37

徳島県護国神社本殿には面白いおみくじがある。阿波弁おみくじである。表には「阿波踊りみくじ」と書いてあるが、中身は阿波弁(徳島弁)で書いてある。

おなじアホなら引かなきゃソンソン~。阿波踊りみくじ 阿波弁じょ 徳島はええとこじょ

今回の参拝で私がひいたみくじは小吉で以下の通り。

「恩をあだで返されるような不幸災難があってつらいけんど、怒らんと我慢しとったら、どないかなるけん。無理せんとのんびり行きよ。信用失うけん、なんぼ腹が立っても、いらんこと言うたらあかんじょ。」

書いてある内容が、今の私にドンピシャでびっくりするとともに、自戒する気持ちをあたらめて持った。

ここには先の大戦で戦地に赴いた徳島県出身の慰霊碑が本殿脇に建立されている。

そのうちの一つに、硫黄島慰霊碑があった。碑の後ろに回ると、硫黄島で亡くなられた徳島県出身の計55名の英霊の名前が刻まれていた。

以前ブログで紹介した硫黄島の洞窟入口に掘られた名前「■田嘉壽雄」さんの名前があるか、ひとつひとつ石の上から指でなぞって確認したが、徳島県出身者の中にはおられなかった。

硫黄島(いおうとう)~76年前の刻印~

阿波踊りが始まる2023年08月12日 06:41

徳島県の阿波踊りが始まる。ナマで見るのは初めてだ。
徳島県の人々は、この日の為に、1年間鍛錬している。
「連」と呼ばれるグループを組織して、連ごとに踊る。男踊りは腰を低くしてがに股で進む。女踊りは背筋をしゅっとして細い腕をまっすぐ上げ、内股で進む。男踊り、女踊りで共通しているのは指先の美しさだ。
「踊るアホウに、見るアホウ、同じアホなら踊らにゃ損損」と言われ、
誰でも自由に飛び入り参加して踊れるが、美しく踊るにはやはり鍛錬が必要である。
聞くところによると、「連」の踊り手になりたかったら、まずスクワットを練習するらしい。これに耐えられなければ、踊りをさせてもらえない、
それくらい徳島県人は踊りにこだわりを持っている。

「残念ながら」コロナは陰性だった件2023年07月31日 18:03

武漢肺炎(新型コロナ)期間のこの3年間、ワクチンを一度も打たず、PCR検査も一切せず、風邪もひかず過ごしてきたが、この夏、ここにきて、風邪をこじらせてしまった。

10数年ぶりの症状だ。

喉のイガイガから始まって、どんどん声が出なくなり、咳が止まらず、体温は37度を越えないものの、平熱より1度高く、火照った感じが続いた。

耳鼻科と呼吸器科にかかり、強めの抗生物質と咳止めで、2週間たってようやく症状が収まってきた。(あとは最後の喉のイガイガだけ)

武漢肺炎期間でもこんな症状はなかったので、この機会にと、以前会社で無料配布された抗原検査キットを初めて試してみることにした。ワクワク感が堪らない。

検査キットの裏の説明(クリックすると拡大画面有り)

しかし「残念ながら」陰性であった。こんなに悪化した症状でも結果は陰性なのだ。

職場では今ごろになって、次々と管理職の人たちが「新型コロナ」でダウンして、自宅療養し始めている。

ま、これだけ免疫力を自負していた私が10数年ぶりの悪い風邪にかかるのだから、彼らが「コロナ」でダウンするのも当然であろう。 コロナ期間中、ワクチンもPCR検査も受けなくてよかった。

対応が迅速すぎる図書館~『LGBT不都合な真実~』2023年07月24日 19:42

 LGBTの権利を過度に主張する側の著書が多い中、ゲイをカミングアウトした元参議の松浦大悟さんの『LGBTの不都合な真実』が21年に出版された。「LGBT活動家」にとって不都合なこの本を出してくれる出版社がなかなかみつかからず松浦さんは苦労したという。
 それなら是非読んでみたいと、地元の図書館の蔵書を調べたら、その図書館にも県内の図書館にも蔵書がなかった。早速購入リクエストをし、その足で本屋に自分で購入するため、取り寄せの依頼をした。図書館に頼んでもいつになることやらと思ったからだ。
ところが、図書館にいった翌日、図書館から「依頼の図書が用意できた」と通知が来た。本屋の取り寄せより早かった。
 早速図書館に借りに行った。本の天には○○市立図書館、と押印されていたので、私がリクエストしたその日に購入したのだった。
 対応が早すぎる。有り難く読ませていただきます。
私が本屋で買えば私しか読まないが、図書館の蔵書にしてもらうことで、一人でも多くの市民にも読んでもらえる。

凍結ツイッターが復活した~有難う、イーロンマスク~2023年07月20日 19:52

 2012年に始めた私のツイッターアカウントが2018年にツイッターによって突然凍結された。ツイッターの左傾化した偏向方針が激化する中での凍結だった。
 人に絡んだり、脅したりした覚えもなく、合点がいかなかったが、ツイッター社からは明確な「違反」が提示されることはなかった。
 それがこの度、復活した。
このところアカウントを持っていないと人のツイートを閲覧することすらできなくなったため、不便を感じて、久しぶりにツイッター社に申し入れをした。
すると返信が帰って来て、「これとこれを削除したら復活する」と具体的に「問題」が指摘された。
 悔しかったが止む無く、そのツイートを削除したことろ、アカウントが復活した。
 以前のツイッター社なら(凍結したアカウントが多すぎて)いちいちかまってられなかったろうが、イーロンマスクの手にツイッター社が入ってから社内改革が進んでいると耳にしたので、試しに再申し立てした結果の復活だった。
 ツイッターアカウント凍結を機に始めたこのブログだが、引き続きこちらで思う存分綴っていきたいと思う。
 因みにツイッター社に削除しろと、指摘を受けたツイートは以下の通り。私の経験を述べただけで、どこが問題か全くわからない。

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 5年前仕事で※シナ当局と交渉する事になり、我が社の現地法人は日中国交回復から40年以上の歴史がある古株だから「日中友好、老朋友」で交渉を乗り切ってと50代のシナ人社員に指示したら「もう日中友好は効きません、全て金です」と。日中友好は死語です。
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(※シナはチャイナの日本語で差別用語ではありません。中国にはシナコムというインターネットサービス企業もあります)

最後は目で決まる~刺繍に想う2023年01月08日 15:35

 長年の友人が習っているモラ刺繍の作品展覧会があるというので伺った。初めてモラ刺繍という言葉を聞いたので事前に調べてみると、中米パナマの先住民族であるクナ族が独自に生み出した多重アップリケとのことだった。

 展示されている作品はどれも皆趣味で習っているとは思えないほど、さまざまな色の組み合わせが全体的に調和がとれていて素敵なものばかりだった。図案(デザイン)も原住民の暮らしや野生動物を表すものから、鶴亀千鳥の日本調のもの、ヨーロッパ風のものまで、どれもひとつとして同じものがない鮮やかな作品であった。
 これらの作品を見て感じたのが、刺繍であれ、絵画であれ、最後に目をどのように描くか(瞳をどう入れるか)が重要だということだった。視線や瞳の大きさなどをしっかり描くことで、作品全体の締りや、その人物・動物そのものの価値や崇高性が決定される。たとえ細かな刺繍や彩りが完璧でも、最後の「目」入りがいまいちだと、結局作品全体に締りがなくなってしまう。
 一方同様に私が過去に見たことがある刺繍は北インドにあるチベット亡命政府で見た伝統継承施設ノルブリンカで見たチベット人が作る刺繍であった。

北インドダラムサラにあるチベット文化研究所ノルブリンカのサイトにあるアップリケタンカのサイト

 デザインはすべて仏像や仏の化身の獅子など仏教にまつわる物であった。モラ刺繍同様細かな手作業のものだった。これについても仏様の目、獅子の目、これがどう置かれるかでその仏画全体が決まってくる。「目は口程に物を言う」というが、絵画、刺繍においても目が非常に重要な役割を果たしている。