イチョウ考~靖國神社で銀杏を拾う~2020年11月09日 00:00

美味しそうに見えるがすごく臭い靖國の銀杏
先般徳富蘇峰先生の天から降ってきた銀杏をいただいたことから派生し、製本教室の帰り道、いつもなら古書店巡りをするのだが、その日は靖國神社へ参拝し、今しかない靖國の銀杏拾いに行くことにした。私は茶わん蒸しに入っている銀杏も避けるほうなので、銀杏を拾いに行ったのは食べるためではなく、イチョウを育てるためである。
靖國の参道には大イチョウが林立しておりそのうちの3~4本の木の下にだけ銀杏がゴロゴロ落ちていた。下乗に近いイチョウの下で銀杏を拾っていると、私のそばで同じく銀杏を手に持った老齢の御婦人と70代くらいの男性が立ち話をしていた。おいくつですか、などど挨拶しているので初対面らしい。二人の会話が自然に聞こえてくる。
御婦人が8歳の時にお父さんが戦死された。御婦人の名前は本間さん。小堀さんという(作家?小堀桂一郎先生?)から本に書きたいと言われ、本に載せてもらうような偉い者でもないと恐縮すると、小堀さんから、貴女は遺族の代表、お父様は英霊の代表だと思ってくださいと諭され承知した。北朝鮮に日本人がいつまでも拉致されたままで、いまの日本は情けない、どうなっているのか、などなど。
銀杏を拾い終わって社殿へお参りに行った帰り道でもまだお二人は同じ場所で立ち話をしていた。

イチョウは雄と雌があって、木を見ただけでは区別がつかない。実をつけることで初めて雌であることが分かるらしい。ただ一説によると、種でも雄雌が分かるらしい。周りの臭い果肉を取り除いたときに種の外皮がつるんとしているのが雄、真ん中に一本筋が余分についているのが雌だという説もある。靖國で50個近くは拾っただろうか。そのうち雌だと言われている筋がある種は2~3個しかなかった。四葉のクローバーみたいなものだ。

あの臭い果肉、見た目は杏子みたいで甘ずっぱそうな気がするが、とにかく臭いがきついので口に持って行こうとも思わない。なぜあんな臭い果肉があるのか、存在意義はなんなのか。これも一説によるとあの悪臭の果肉を好む動物がいるらしい。狸のたぐいで、銀杏を食べたら中の種をフンとして別の場所に運んでくれるため、一部の動物に対してあの臭い果肉は意味があるらしい。不思議なものだ。

不思議ついでにもうひとつ。イチョウということば、発音が大和ことばらしくない。現代中国語でイチョウの木の事を公孫樹というが鴨脚樹ともいう。確かにイチョウの葉っぱは水かきのついたアヒルの脚に似ている。しかも鴨脚と書いて今の中国語でも(YAJIAOヤーチャオ)と発音する。ヤーチャオ=イチョウで発音が似ていると思いませんか。中国語の辞書を引いてみたら「日本語の「イチョウ」は“鸭脚”(アヒルの足)の宋音(漢字音の一種)に由来する」とあった。

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