味を守るということ2021年04月09日 20:53

2020年3月12日と6月8日の当ブログで「讃岐うどん 世代交代で再開 ―」「職人の意地」と題し、近所の讃岐うどん屋で二代目の息子が年老いたお母さんと頑張っていることを以前紹介した。
ここのうどんはメニューにも「黄金の出汁」と記されているとおり、薄い色だが味わい深い関西風昆布出汁が魅力だ。
ところが今日久しぶりに讃岐うどん屋へいき、定番のきつねうどんを頼んだが様子が違った。店内は昼時でもあって繁昌しているが、出されたきつねうどんを見たらちょっと違う。「黄金の出汁」と呼ばれる薄い昆布だしが醤油の濃い色の出汁になっていた。
まあ、いいやと、油揚げをいただき、うどんをすすっていると、今度は麺と一緒に髪の毛が1本出てきた。え?髪質とその長さから自分の髪の毛ではない。ふと、厨房内の二代目の息子を見たら、帽子もかぶらず調理していた。恐らくあのオールバックから髪が麺に落ちて入ったのであろう。先代は白衣を着て必ず調理帽をかぶっていたし、二人三脚のお母さんは今も三角頭巾をちゃんと被っている。年老いたお母さんが1杯550円のうどんを商売に一生懸命働いているのを見ると、髪の毛が入っていることを直ぐ言うのは止めた。今言えば新しいうどんをもう一杯だすだろうから。
興ざめしたので箸を途中で置いて「お勘定お願いします」と言うと、お母さんが席まで来たので、ドンブリから取り出してテーブルに置いた髪の毛を示して「うどんに入っていました」と言って、代金を払い店を出た。
お母さんは「済みません、有難うございました」といつもの挨拶で見送った。
黄金の出汁が醤油色になり、うどんから髪の毛が出てきた。50年以上店を守ってきた先代では考えられらなかったことだろう。人間の慢心によって、ひとつの味を守ることが如何に大事か、難しいか、息子が作った一杯のうどんから感じた出来事だった。

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