毛沢東を「修復」する~黒につつまれた赤~2023年08月28日 16:30

 30年以上前に北京や日本の語学学校等で手に入れた毛沢東関連の古書を思い出し書棚から取り出すと、ビニールの表紙が変形・変色していた。いずれも文化大革命真っただ中の1960年代の出版で、当時の生活水準を偲ばせる簡素な装丁であった。それらをこの機に「贅沢」な総革に仕立て直すことにした。

まずは書籍本体、以下の4冊だ。
①『毛沢東選集』(中国語):1406ページ
②『毛沢東思想勝利万歳』(中国語 毛沢東語録も収録):579ページ
③『毛沢東語録』(日本語):431ページ
④『Quotation from Chairman MAO TSU-TUNG』(英語):312ページ

装丁前:ビニール製ブックカバー型並製
装丁後:総革丸背ソフトカバーつきつけ装
表紙:赤のシュリンク牛革
見返し:北京で購入した文化大革命トランプをコピー
タイトル:ホットペンと星型活字で箔押し
ケース:羊革五星紅旗空押し観音開き掛金錠四方帙 内側はアートレザー

 4冊とも原本は見返しもなく全体が粗末なものだった。以前北京軍事博物館で購入した文化大革命トランプから、文革当時のプロパガンダポスターをカラーコピーして、見返しにしつらえ、「豪華」な総革装丁に見合うカラフルさを演出した。

毛沢東語録とプロパガンダポスターは同時代のものであるが、本は本、ポスターはポスターで用途が別なので、当時でも両者は一緒に使われることはなかった。それを今回装丁しなおした本の中にプロパガンダポスターを見返し(表紙の内側)に仕立ててコラボさせた。

 最後にこの4冊を収めるブックケースがポイントだ。中国共産党にとっても「黒歴史」である文化大革命をとらえるには、ブックケースも黒以外考えられなかった。一頭分の黒い羊革を使い、観音開き風のケースにし、外装は鉄格子の向こうに、文化大革命自体の人民や毛沢東が見えるしつらえにした。この観音開きの扉を閉ざす錠は、以前ホームセンターで懐かしいと思って衝動買いし、いつか使いたいと思っていた掛金錠を使った。

最後にケースの上蓋、鉄格子の毛沢東の窓の下方に、五星紅旗を、金箔は使わず、黒い★を演出するため空押しをした。
「黒」につつまれた「赤」。「黒」を開けると、華やかかりし文化大革命の遺産「赤」がお出ましになる。世界広しといえどこんなに「豪華」な総革装丁の毛沢東語録は他にはないであろう。