恋愛リアリティ番組「テラスハウス」について2020年05月24日 10:35

木村花さん
フジテレビの番組「テラスハウス」に出演していた女子プロレスラーの木村花さんが自殺したと報道があった。「テラスハウス」は面倒くさそうな番組だなと思って「1ミリも」見る気がしなかった。なにせ、テレビ局が用意した環境で複数男女を住まわせ、台本がない番組だと聞いたからだ。フィクションでもノンフィクションでもないところが恐ろしい。
ある出演者は有名になる足がかりとして利用するだろうし、ある出演者は本当に恋愛がしたくてその環境に本気になってのめりこむかもしれない。出演者ですらお互いの思惑が違う中で、テレビ局から何かを期待され(衝突だったり、失恋だったり、恋愛成就だったり)必死で演じるか、リアルに作り上げるしかないプレッシャーで暮らしていかねばならない。
私も大学のクラブ活動時でさえ、誰が誰と付き合っていて、誰が元彼女で、となかなか面倒くさい状況があったなかで、ましてや見知らぬ男女が始終一緒に暮らし、視聴者からも何かを期待され注視されているのは異常な環境である。その視聴者自身もまた見ているうちに、バーチャルとリアルの区別がつきにくいまま番組に自己投入し、出演者を称賛したり非難したりする。
昔、英文学の授業で、カトリック神父でもある高柳俊一教授から、「人が小説を読むのは読んだ後にカタルシスがあるからだ」と教えてもらった。カタルシスとは医学用語で「排泄」とか「下痢」とかいう意味だが、小説を読むことによって自己をその物語に投影し、最後には自分の中にあったものを出し切って、読んだ後すっきりする、ということだ。
この「テラスハウス」が小説や普通のドラマと違うのは、ストーリーは出演者に委ねられているために、作家が最後に伝えたかったことも教訓も結末もなく、「カタルシス」は絶対得られないことだ。ストレスや苛立ちだけが残る。
誰もがリアルとバーチャルの区別がつかない中で、木村さんは全力で番組にぶつかったが故に耐えられなくなり、そこから逃げる道は自殺しかなかったのだろう。皮肉なことに、一緒に出演した男性新野俊幸氏が経営する会社はメディアでも面白おかしく取り上げられている「退職サポート事業」である。身近にいる彼も結局彼女をサポートすることはできなかった。
https://exitinc.jp/
https://www.taishokudaikou.com/

情報が氾濫し、他人様の心の中まで踏み込めてしまう昨今、自分の許容範囲以上のことをひきうけるか、止めるかの選択する能力も必要になってくる。

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