1300年をひとりじめ2021年09月07日 11:55

 平成28年の奈良春日大社の正殿式年造替の際、神様を仮殿に移した後の神様のいない正殿を期間限定で公開するというので初めてそこを訪れた。そのころはインバウンド真っ盛りで、チャイニーズの団体客が玉砂利の参道を立ち食いしながら闊歩していた。あまりに目に余ったので、私が中国語で、「ここで飲み食いはするな」と注意すると、「もうすぐ食べ終わる」とチャイニーズ倫理で言い訳していた。彼らの日本観光はどこでもそうだが、基本無料の場所に足を踏み入れ、ディズニーランド以外は入場料を払うことはない。ここ春日大社でも初穂料を払ってまで式年造替で特別公開の正殿見学することはなかったので、正殿周辺は静かな日本人参拝客で混雑していた。

 この度奈良で半日時間があったので6年ぶりに平日の午前中春日大社を訪れた。前回と違ってうるさいチャイニーズもいなければ、日本人参拝客も極めて少なかった。前回自由に参拝できた国宝の正殿周辺は初穂料が必要な区域になっていた。

 さっそく初穂料を収め立ち入ると、ひとっこ一人いない。どこからか入ってきた神鹿が1頭草を食んでいる。国宝の正殿、樹齢1000年の大杉、859年創建で玉砂利がきれいに掃き清めている幣殿、それぞれの時代の人々が奉納した万燈籠、私がこの瞬間これらを目の当たりにし、静寂の中1300年の空間をひとりじめでき穏やかで清々しい気持ちになったひとときだった。神様に感謝。
幣殿 859年創建

創建859年の祭場幣殿、神鹿、樹齢1000年の大杉

回廊につるされた万燈籠

春日大社重文藤波の屋の万燈籠

藤波の屋の闇につるされた万燈籠


帰り道の参道で地にひれ伏しているものを見かけた。よくみると神鹿が食んでいる様子を鹿目線で撮影している人間だった。

神鹿を撮る者